お疲れ様。ありがとう。

そして健康診断も終わりほっとしていたところに、母からメールが。

母方の祖父が、心筋梗塞で危篤状態とのことでした。

そっか、とだけ思いました。



私が大学4年の春。今は認知症っていうんですよね?

祖父がそれになってしまったんです。

前々から兆候はあったらしいんですけど、突然祖母以外のことがわからなくなったんです。



ようやく内定をもらえた私は、その帰りに祖父母のところに顔を見せに行きました。

家には祖父がいて、私は「久しぶりー」と家の中に入っていこうとしたら。



「お前誰だ?」



何の冗談かと思いました。

珍しいスーツ姿だからふざけてんのかな?と思ったりもしました。

でも祖父はあまり冗談を言うような人じゃなかったし。

その表情も、本気で私が誰だかわかっていない、そう言っていました。



頭の中が真っ白になりそうだったけど、一生懸命私が誰か教えようとしました。

名前を言ったり、母親や従兄弟のことを言ったり。

でもやっぱり祖父は私のことを「知らない」と言い続けました。

その目は、私を警戒しているようにしか見えませんでした。



わけがわからなくて私があたふたしていると、祖母が帰ってきたんです。

とりあえず家の中に入れてもらって、それから祖父の話を聞きました。

少し前からボケが始まっていて、最近は自分の子供(私の母親や伯父)のこともわからないと。

日常生活も今まで通りにできなくなって、大変だと言いました。



トイレに行けばそこらじゅうに尿を撒き散らす。

ついさっきご飯を食べたのに、「飯はまだか」と聞く。

ズボンの穿き方がわからない。



私が就活で忙しいからと、口止めするよう母親に言ってたみたいです。

それがこんな形で知ることになろうとは。

認知症というものの存在は知っていたけど…。

現実にどんなものなのかは、身をもって知りました。

自分という存在が相手の中から何もなくなってしまった。

辛かった。でもきっと、一番辛いのは祖父なんだろうと思いました。



そして危篤状態だった祖父が、つい先日亡くなりました。

わりと落ち着いてます。それでもやっぱり、悲しいけれど。

最後に祖父とまともに会話したのはいつだったんだろう。

思い出せない自分が情けないです。

そんな私ですが、86年精一杯生きたであろう祖父に、お疲れ様とありがとうと言いたいです。